ここ向津具には猿や鹿はほとんどいませんが、猪はたくさんいます。
昔は、里と山がはっきりと分かれていたので、里に猪がおりてくることも少なかったといいます。
今は、だんだんと人の数が減り、里や山を利用することも少なくなり、境目がはっきりとしなくなり、畑のおいしい作物の味を覚えた猪が、里におりるようになりました。
向津具は植林が少なく、広葉樹が多いです。生態系がまだまだ豊かなので、猪の餌もあるようですが、それでも真夏や真冬のエサが少ない時は猪も必死!
田んぼを荒らすことを覚えた個体がたびたび現れます。
ヤマを豊かに保ち、人と獣が共生できる環境づくりをすることが理想ですが、
ぼくらも田んぼを守ることに必死、地区の長老たちと一緒に猪の罠を仕掛け、
田んぼを荒らす個体だけでいいから捕ろうと必死です。
生きているお米の小米など、食用に適さないお米を猪のえさに使います。
農と生きものは切っても切れない縁でつながっていて、
田舎に来て、抵抗があったことも、やってみると、そこに大事な学びが待っていることに気が付きます。
彼らの命をいただく度に、考えさせられることがたくさんあり、
野生で育った彼らのたくましい命と力強い肉は、
僕らもこの自然の中をこれからもたくましく生きぬいていかなければという、エネルギーと覚悟のようなものを与えてくれるように感じます。
ド田舎の自然の中に住みはじめて、ひしひしと感じること。
人間以外の生き物がいっぱいいて、その存在が肌で間近に感じられ、
全ての生き物が必死に生きている、お米も当然生きている、ということに改めて気づかされたことが、
『生きているお米』を作りたいと考えるきっかけにもなっています。
お米が生きて発芽する、ということだけではなく、そのまわりにある環境や自然や獣たちといった生きものすべての営みの息吹や気配といったものも、
生きているお米に詰められたらいいなと思っています。